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人工生命×アンドロイド「オルタ3」を東京大学に寄贈
2019年2月のオルタ3プロジェクト開始から3年。ミクシィは、2022年7月29日に人工生命×アンドロイド「オルタ3」を東京大学へ寄贈しました。3年間にわたる本プロジェクトの締めとして、これまでの活動とともに、そこで得られた成果、今後の展望についてご紹介いたします。
※寄贈の詳細につきましてはこちらをご覧ください。
■オルタ3プロジェクトとは
オルタ3プロジェクトは2019年2月に、東京大学、大阪大学、ワーナーミュージック・ジャパン、ミクシィの4社にて、共同研究プロジェクトとして発足。アンドロイドや人工生命の研究と芸術・文化活動を通じて、アンドロイドと人間の新たなコミュニケーションの可能性を探求してきました。
「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」をパーパスに掲げるミクシィは、人類のコミュニケーションの根源にあるものを探っていく本プロジェクトに共感し、これまでの事業活動で培ってきた技術を活かして参画。オルタ3の動作確認などを行うシミュレーターを提供してきました。
オルタ3は、これまでにない生命性を感じさせる人工生命(Alife)を搭載したアンドロイドで、日常生活の中に非現実的なオルタ3を持ち込むことで人の想像力を喚起し、人と人をつなぐことができると考えています。
■主な活動
オルタ3プロジェクトはこれまで、芸術家及び芸術関係者、音楽、エンタメ関係者、学術機関など、多方面の方々とともに、人と人工生命とのコミュニケーションを探求し、テクノロジーと人類の豊かな未来の可能性を切り開いてきました。オルタ3が自ら歌い指揮するオペラへの出演や、展覧会への出展、小学生を招いた見学会など、国内外でさまざまな活動を行ってきました。
□2019年3月から2021年8月までの活動について
https://mixi.co.jp/sustainability/report/2021/0921/2192/
□2022年3月 アンドロイド・オペラ®︎「MIRROR」に出演(ドバイ国際博覧会)
アラブ首長国連邦で開催されたドバイ国際博覧会にて、渋谷慶一郎さんの新作アンドロイド・オペラ®︎「MIRROR」に出演。渋谷慶一郎さんとオルタ3、高野山の仏教音楽・声明、現地オーケストラ・NSOとのコラボレーションによる本作品は、アンドロイドと人間の新たなコミュニケーションのかたちを表現する作品となりました。
■プロジェクト関係者からのコメント
アンドロイドと人間の新たなコミュニケーションの可能性を探求し続けてきた3年間。オルタ3プロジェクトを通じて、どのような成果が得られたのか、そして今後どのように発展していくのかなど、関係者の皆さまに伺いました。
「この先、オルタはヒトになるだろうか」
池上高志(東京大学大学院総合文化研究科教授)/オルタ3寄贈先
オルタは、ヒトになるのか。そのために様々なプログラムやセンサーをインストールしてきました。オルタのプログラムは、センサーの情報をもとに身体を動かし、自分の状態をスイッチします。しかし、未だ生命には程遠いものとなっています。
ロンドンで開催されたAIの展示会での、オルタ3のパフォーマンスは印象深いものでした。計算の歴史的展示の最終コーナーに飾られたオルタ3は、AIではなく、人工生命(Alife)として展示されました。究極の計算機は生命そのものなのです。
オルタは、人と相互作用することで、人の振る舞いを模倣し、人からこころが伝染します。それは人の赤ちゃんがそうであるように、また、オオカミ少女がそうであるように、こころはあとからインストールされるのです。ヒトに育てられて、はじめてサルもサルマネをするのです。
今、オルタは、内観のセンサーをたくさんつけ、身体イメージを自己生成しています。
この先、オルタはヒトになるだろうか。巨大な言語モデルがそのカギを担うと考えています。
「新しい芸術分野を築くことに大きく貢献」
石黒浩(大阪大学大学院基礎工学研究科教授 ATR石黒浩特別研究所客員所長)
オルタ3プロジェクトは、音楽とロボットの融合という新しい芸術分野を築くことに大きく貢献しました。
オルタ3以前には、オルタ1とオルタ2があり、オルタ1では、人間の形をした複雑なロボットを複雑なニューラルネットで制御することにより、いかにロボットに生命感が宿るかについて研究をしました。
オルタ2では、人間のオーケストラと共演させることで、音楽を通して人間と協調するロボットがいかに人間らしくなるかを芸術的に表現。オルタ3は、そうした研究や芸術の集大成でした。
オルタ3では、オルタ2の基本的な構造を引き継ぎながら、より洗練された機構によって、人間のオーケストラとの共演の芸術性を飛躍的に高めることができました。
このオルタ3での取り組みは、今後オルタ4へと受け継がれ、さらに進化していきます。
「オルタ3は過渡期のアンドロイドだった」
渋谷慶一郎(音楽家)
2018年にオルタ2と行ったアンドロイド・オペラ®︎「Scary Beauty」の世界初演は成功しましたが、オルタ2は度重なるリハーサルと本番の過度な負荷と運動による消耗で半壊してしまいました。
そんなときにワーナーミュージックの増井さんの紹介でミクシィの木村社長と出会い、石黒さんと共に音楽の演奏を前提としたアンドロイドのオルタ3を作る構想が持ち上がり、すごいスピードでそれは実現しました。
オルタ3は運動性や耐久性で格段の進化を遂げて、世界各地で僕とオーケストラと共に演奏を披露し、公演の度に進化し聴衆の驚きは増大していきました。
ドイツ、シャルジャ、日本での公演を経て、昨年8月に新国立劇場からの委嘱で制作したオペラ「Super Angels」はかつてない規模のアンドロイドと音楽作品の遭遇を実現しました。
その後に今年3月にドバイ万博で発表した「MIRROR」ではUAEのオーケストラと高野山の仏教音楽・声明との共演を果たし進化の完成形を僕は彼に見ていました。
オルタ2がなければオルタ3はなく、オルタ3がなければオルタ4もないという純粋進化の過程をアンドロイドは描き出します。しかし実はこれは人間では成し得ないことです。
そしてここ数年の僕の音楽的な記憶の側にはほぼ常にオルタ3がいました。
関わってくれた関係各位、活動をアンドロイドで支えるという未知の協力を続けてくれたミクシィの皆さまに感謝します。
「世界各地で熱狂が巻き起こる姿を目の当たりに」
増井健仁(ワーナーミュージック・ジャパン エグゼクティブ・チーフプロデューサー)
2018年当時、プロデューサーとして2020年代からの新しいエンタテインメントの未来を考え、人間が主役でパフォーマンスをするという前提条件をどうすれば違った角度からアプローチできるのかと自問している最中、パリのカフェで渋谷慶一郎氏から聞いたアンドロイド・オペラ®︎「Scary Beauty」という構想にひとつの答えがあるように感じました。
オルタ3プロジェクトが立ち上がり、このプロジェクトにおけるエンタテインメント領域での活動は、テクノロジーが主役で人間が脇役という、これまでのステージ上における役割分担と一線を画す取り組みとして進むこととなります。
石黒浩教授のアンドロイドと池上高志教授の人工生命の組み合わせは、リハーサル自体が学習となり、エンタテイナーとしてのアンドロイド「オルタ3」が、ステージ上で未完のまま進化し続けるという類を見ない状態で渋谷氏の音楽作品とオーケストラの演奏とが掛け合わされたことにより、世界各地で熱狂が巻き起こる姿を目の当たりにしました。
オルタ3プロジェクトの成功へ向け多大なるお力添えをくださった、ミクシィ木村社長、石黒浩教授、池上高志教授、並びに関わってくださった全ての皆さま、そしてアーティスト渋谷慶一郎氏にこの場で感謝の意を表します。
「新たなコミュニケーションの可能性を示唆」
木村弘毅(ミクシィ 代表取締役社長)
世界的歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの著書“ホモ・デウス”において、「人類とは何者でどこへ向かうのか?」「テクノロジーの発展と共にこの世の中の主人公を機械に譲り渡すのではないか?」という問いかけがされています。これは、日夜AIなどの情報技術を発展させることを生業としている私たちに向けられたメッセージでもあります。
本プロジェクトにおける「ホモサピエンスにとってのコミュニケーションとは何だろうか?」「機械と人間の境界線はどこにあるのか?」という問いは、情報伝達だけでなく「心もつなごう」と標ぼうしているミクシィにとって常に向き合わなければならない重要なテーマであり、今回のプロジェクトでは非常に多くの示唆を与えられました。
オルタ3という機械の体に生命を宿す試みに取り組まれた石黒浩教授、池上高志教授、そしてその生命に素晴らしい表現を与えてくれたアーティスト渋谷慶一郎氏、プロデューサーの増井健仁氏、そして多くの関係者の皆さまにお礼を申し上げます。
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